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十 - 8(1 / 2)

「ホホホホ旨(うま)いのね。わたしもこれからそうしよう」

「そうなさいよ。それでなくっちゃ損だわ」

「こないだ保険会社の人が来て、是非御這入(おはい)んなさいって、勧めているんでしょう、――いろいろ訳(わけ)を言って、こう云う利益があるの、ああ云う利益があるのって、何でも一時間も話をしたんですが、どうしても這入らないの。うちだって貯蓄はなし、こうして小供は三人もあるし、せめて保険へでも這入ってくれるとよっぽど心丈夫なんですけれども、そんな事は少しも構わないんですもの」

「そうね、もしもの事があると不安心だわね」と十七八の娘に似合しからん世帯染(しょたいじ)みたことを云う。

「その談判を蔭で聞いていると、本当に面白いのよ。なるほど保険の必要も認めないではない。必要なものだから会社も存在しているのだろう。しかし死なない以上は保険に這入(はい)る必要はないじゃないかって強情を張っているんです」

「叔父さんが?」

「ええ、すると会社の男が、それは死ななければ無論保険会社はいりません。しかし人間の命と云うものは丈夫なようで脆(もろ)いもので、知らないうちに、いつ危険が逼(せま)っているか分りませんと云うとね、叔父さんは、大丈夫僕は死なない事に決心をしているって、まあ無法な事を云うんですよ」

「決心したって、死ぬわねえ。わたしなんか是非及第(きゅうだい)するつもりだったけれども、とうとう落第してしまったわ」

「保険社員もそう云うのよ。寿命は自分の自由にはなりません。決心で長(な)が生(い)きが出来るものなら、誰も死ぬものはございませんって」

「保険会社の方が至当(しとう)ですわ」

「至当でしょう。それがわからないの。いえ決して死なない。誓って死なないって威張るの」

「妙ね」

「妙ですとも、大妙(おおみょう)ですわ。保険の掛金を出すくらいなら銀行へ貯金する方が遥(はる)かにましだってすまし切っているんですよ」

「貯金があるの?」

「あるもんですか。自分が死んだあとなんか、ちっとも構う考なんかないんですよ」

「本当に心配ね。なぜ、あんななんでしょう、ここへいらっしゃる方(かた)だって、叔父さんのようなのは一人もいないわね」

「いるものですか。無類ですよ」

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