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十一 - 24(1 / 2)

「いいですね。是非周旋を願いましょう」

「これでもいいですか」とまた一枚つきつける。

「それもいいですね。是非周旋して下さい」

「どれをです」

「どれでもいいです」

「君なかなか多情ですね。先生、これは博士の姪(めい)です」

「そうか」

「この方は性質が極(ごく)いいです。年も若いです。これで十七です。――これなら持参金が千円あります。――こっちのは知事の娘です」と一人で弁じ立てる。

「それをみんな貰う訳にゃいかないでしょうか」

「みんなですか、それはあまり慾張りたい。君一夫多妻主義(いっぷたさいしゅぎ)ですか」

「多妻主義じゃないですが、肉食論者(にくしょくろんしゃ)です」

「何でもいいから、そんなものは早くしまったら、よかろう」と主人は叱りつけるように言い放ったので、三平君は

「それじゃ、どれも貰わんですね」と念を押しながら、写真を一枚一枚にポッケットへ収めた。

「何だいそのビールは」

「お見やげでござります。前祝(まえいわい)に角(かど)の酒屋で買うて来ました。一つ飲んで下さい」

主人は手を拍(う)って下女を呼んで栓(せん)を抜かせる。主人、迷亭、独仙、寒月、東風の五君は恭(うやうや)しくコップを捧げて、三平君の艶福(えんぷく)を祝した。三平君は大(おおい)に愉快な様子で

「ここにいる諸君を披露会に招待しますが、みんな出てくれますか、出てくれるでしょうね」と云う。

「おれはいやだ」と主人はすぐ答える。

「なぜですか。私の一生に一度の大礼(たいれい)ですばい。出てくんなさらんか。少し不人情のごたるな」

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