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八 - 11(2 / 2)

「それでどうしたい」

「どうしたか聞いても見なかったが、――そうさ、まあ天稟(てんぴん)の奇人だろう、その代り考も何もない全く金魚麩だ。鈴木か、――あれがくるのかい、へえー、あれは理窟(りくつ)はわからんが世間的には利口な男だ。金時計は下げられるたちだ。しかし奥行きがないから落ちつきがなくって駄目だ。円滑(えんかつ)円滑と云うが、円滑の意味も何もわかりはせんよ。迷亭が金魚麩ならあれは藁(わら)で括(くく)った蒟蒻(こんにゃく)だね。ただわるく滑(なめら)かでぶるぶる振(ふる)えているばかりだ」

主人はこの奇警(きけい)な比喩(ひゆ)を聞いて、大(おおい)に感心したものらしく、久し振りでハハハと笑った。

「そんなら君は何だい」

「僕か、そうさな僕なんかは――まあ自然薯(じねんじょ)くらいなところだろう。長くなって泥の中に埋(うま)ってるさ」

「君は始終泰然として気楽なようだが、羨(うらや)ましいな」

「なに普通の人間と同じようにしているばかりさ。別に羨まれるに足るほどの事もない。ただありがたい事に人を羨む気も起らんから、それだけいいね」

「会計は近頃豊かかね」

「なに同じ事さ。足るや足らずさ。しかし食うているから大丈夫。驚かないよ」

「僕は不愉快で、肝癪(かんしゃく)が起ってたまらん。どっちを向いても不平ばかりだ」

「不平もいいさ。不平が起ったら起してしまえば当分はいい心持ちになれる。人間はいろいろだから、そう自分のように人にもなれと勧めたって、なれるものではない。箸(はし)は人と同じように持たんと飯が食いにくいが、自分の麺麭(パン)は自分の勝手に切るのが一番都合がいいようだ。上手(じょうず)な仕立屋で着物をこしらえれば、着たてから、からだに合ったのを持ってくるが、下手(へた)の裁縫屋(したてや)に誂(あつら)えたら当分は我慢しないと駄目さ。しかし世の中はうまくしたもので、着ているうちには洋服の方で、こちらの骨格に合わしてくれるから。今の世に合うように上等な両親が手際(てぎわ)よく生んでくれれば、それが幸福なのさ。しかし出来損(できそ)こなったら世の中に合わないで我慢するか、または世の中で合わせるまで辛抱するよりほかに道はなかろう」

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